ふきぶろ

とあるアラフォー男のパフォーマンスアップ奮闘記

疲労回復サプリメントの選び方

クエン酸、アミノ酸、ビタミンB、ビタミンC、BCAA、タウリン、セサミン、ウコンエキス、肝臓エキス、ローヤルゼリー、イミダゾールジペプチド―。

ドラッグストアの疲労回復コーナーは、疲労回復をうたい文句にした商品であふれています。

連日のハードワークで疲れ果てた金曜の夜。ハートに溜まった疲れを癒そうと、あなたは通りがかりの薬局にハラリッと立ち寄ります。

そこで、こんな風に悩んだ経験はありませんか?

「ビタミンB群いっぱいがいいのか、それともビタミンCたっぷりがいいのか?」
「クエン酸1000mgか、アミノ酸1000mgか―それが問題だ!」
「ちょっと恥ずかしいけど、養○酒を試してみようか…」
「疲労回復とは関係なさそうだけど、コラーゲン入りもちょっと気になる…」
「ええいっ!いっそのことレジの薬剤師のお姉さんに指カンチョーしてもらった方が、俺の疲れは吹っ飛びそうな気がする。おねーさ~ん♪」

などなど、悩み過ぎて最後にはあらぬ妄想を抱いてしまい、結局はいつもの飲み慣れたエナジードリンクを肛門に差し―でなく腕に抱えて、レジへと向かう―。

つまり、どの商品、どの成分が自分の疲労に一番効くのか、サッパリ分からない!

そんな疲労回復サプリバージンのあなたに、ドラッグストアのお姉さんに間違ってもカンチョ―依頼しなくてすむような、疲労回復サプリの正しい選び方をお伝えします。

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INDEX

1. 疲労回復サプリメントの4大タイプ

いわゆる疲労回復をうたい文句にするサプリメント・ドリンク類には、大まかに4つのタイプがあります。それぞれ疲労回復という目的は同じです。しかし、働き方に違いがあります。

そもそも何を疲労と定めるのか、その疲労の原因は何か、その原因に対してどのようにアプローチするのか、といった点で違いでが出てくるわけです。

以下、4つのタイプをそれぞれ見ていきましょう。

1-1. 栄養補給型


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例:ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸・必須脂肪酸・ブドウ糖など

1つ目は、栄養補給型。サプリメント(=健康補助食品・栄養補完食品)の定義にビンポイントにあてはまる、最もスタンダードなタイプです。

プラスアルファの特殊効果を狙うというよりは、今現在不足している栄養素を補うことで地味に効果を発揮させることを狙いにしています。

たとえるなら、派手さよりも堅実さで、見た目よりも実質で、顔の美しさよりもお尻の大きさで勝負するのが、このタイプの特性です。

代表的な栄養素は、ビタミン・ミネラル・必須アミノ酸といったおなじみのもの。具体的には、ビタミンB群・C・E、BCAA、亜鉛、鉄、アルギニン、ブドウ糖あたりが、俗に疲労回復や活力アップに効くと言われています。

ただし、普段の食事の栄養バランスが悪いと、何らかの不調を患い、その症状として疲労が出てくることがあります。たとえば、急に疲れやすくなったり、休んでも疲れが中々抜けなかったりする。

とすると、栄養成分表に載っている栄養素であれば、もしそれが不足している場合に限り、この栄養補給型疲労回復サプリとして機能する可能性があります。

その意味で、あえて拡大解釈すれば、人体に必須とされるあらゆる栄養素が、この栄養補給型と言えます。

商品としては、スポーツドリンクやカロリーメイト®などの健康食品、ローヤルゼリーやホニャララエキスの類も、大半がここに分類できます。

1-2. 疲労感解消型


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例:アルコール、カフェイン、テオブロミンなど

2つ目は、疲労感解消型です。

疲労感解消型は、現実の疲れそのものよりも、疲れを感じ取る神経系に作用し、疲労でなく疲労感の方を緩和します。

ずばり、カラダよりもココロに、肛門よりも脳天に働きかけるのが、このタイプの特性です。

代表的なものは、アルコールとカフェイン*1。お酒、お茶、コーヒーなど、おなじみの嗜好品に含まれています。

アルコールやカフェイン類の効果については、ここであえて言うまでもなく、体感しやすいので分かりやすいでしょう。摂取直後から覚醒作用が始まり、その感覚がしばらく持続します。

他の疲労感解消型としては、チョコレートに含まれるテオブロミンがあります。テオブロミンはカフェインに似た成分で、作用も同じような物質です。日本では見かけたことがありませんが、海外ではチョコレートサプリみたいな売り文句で、甘いイメージで可愛く市販されていたりします。

1-3. 疲労物質除去型

3つ目は、疲労物質除去型です。

いわゆる疲労物質と呼ばれるものに、「活性酸素」「アンモニア」「リン酸」などがあります*2

それらを無害なものに変えていく、体外への排出を促すタイプが、この疲労物質除去型です。疲労を積極的に回復させるというより、疲労しにくい体にする、疲労に抵抗する(抗疲労)、疲労を予防するニュアンスが強いです。

(なお、体外排出を促すからといって、このタイプを摂取することで肛門が拡張するわけではありません。勘違いなさらぬよう、くれぐれもご注意下さい。)

この疲労物質除去型は、対象となる疲労物質ごとに、さらに細かく分類できます。近年のサプリメント業界では、「活性酸素」と「アンモニア」をターゲットにするサプリが主流です。

1-3-1. 活性酸素除去(抗酸化)系


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例:ビタミンC・ビタミンE・イミダゾールジペプチド・各種ポリフェノールなど

細胞が酸素を取り込んでエネルギーを生む過程で、一部の酸素は反応性の高い、活性酸素と呼ばれる特殊な酸素に変わります。活性酸素は過剰になると、細胞にダメージを与え、体にとって毒となります。

その活性酸素を減らす物質が、いわゆる抗酸化物質と呼ばれるものです。サプリメントには、この抗酸化性を売りにしたものが多いです。

最も有名なものは、ビタミンCとビタミンE。この2つは水溶性と脂溶性で性質も違うため、よくセットで利用されます。

ほかには、βカロチン、コエンザイムQ10、イミダゾールジペプチド(アンセリン/カルノシン)、各種ポリフェノールなどの著名サプリも、この抗酸化性を売りの一つにしています。

1-3-2. アンモニア除去系


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例:アルギニン・オルニチン・シトルリンなど

肝臓でアミノ酸を分解する際、アンモニアが生まれます。アンモニアはそのままだと細胞のエネルギー産生を阻害するため、尿素に変えられ、最終的に尿として体外に排出されます。

アンモニア除去系サプリは、この尿素回路を活性化するという触れ込み*3で、アンモニアの排出を促すことを売りにしています。

代表的なものは、アルギニン・オルニチン・シトルリンの3つ。アルギニンは肉や大豆、オルニチンはしじみ、シトルリンはスイカに多く含まれています。

1-4. 睡眠改善型


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例:メラトニン・トリプトファン・グリシン・GABAなど

4つ目は、睡眠改善型です。

疲労を回復させるには、何を食べるのか、何を摂取するか以上に、睡眠の質をあげることが重要です*4

この睡眠改善型は、疲労回復のメインエンジンである睡眠の質を高めることで、疲労回復を加速させるタイプです。

他の型と比べると睡眠というプロセスを介するため、一見遠回りな感じですが、実はこっちの方が近道だったりします。

男子の保健体育でよくいわれる、男性器ダイレクトアプローチよりも肛門からの前立腺マイルドタッチの方が、実は本質を突いている、という話と同じです。何事も、前からでなく後ろから、です。

さて、この睡眠改善型の代表的なものには、メラトニンがあります。メラトニンは、日本では医薬品扱いで入手しづらいのですが、海外では時差ボケ調整サプリとして超お手軽に買えます。(参考:政府広報オンライン―海外からの医薬品個人輸入

また、トリプトファン・グリシン・GABAといったアミノ酸系サプリも、睡眠の質改善に役立つと言われ、睡眠マニアによく利用されています。

1-5. 疲労回復サプリの多くは、4タイプの組み合わせ

以上の4タイプは、あくまで、セールスポイント別、目につく分かりやすい機能別の分類でした。実際は一つの商品、一つの成分が複数の型を持っていることがほとんどです。

例えば、栄養ドリンクは、糖分+アルコール+カフェインが基本形で、これに抗酸化物質やビタミン、アミノ酸類が添加されているタイプがほとんどです。なので、栄養補給型とも、疲労感解消型とも、疲労物質除去型とも言えます。

ローヤルゼリーは、糖分・アミノ酸・各種ビタミン・抗酸化性ペプチドなど様々な物質の混合物なため、栄養補給型+疲労物質除去型です。

ビタミンC・ビタミンEは、足りていない人にとっては栄養補給型である一方、強力な抗酸化物質でもあるため疲労物質除去型でもあります。

このように、一つの商品に複数の型がセットで入っている、または一つの成分が複数の型を担っていることが多いです。

2. あなたにとって最適な疲労回復サプリメント

以上の4タイプをふまえた上で、あなたの状況や望む効果に応じた最適な疲労回復サプリメントの選び方をお伝えします。

2-1. アスリート・偏食家・虚弱体質なら、栄養補給型


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運動過多気味のアスリート、好き嫌いの多い偏食家、何らかの欠乏症に陥っている虚弱体質の方に共通する点は、何らかの栄養素が足りていない、ということです。

ならば、その不足しがちな栄養素を補えばいい。つまり、栄養補給型のサプリがベストチョイスになります。

筆者の個人的体験で言うと、実際に何か特定の栄養素が不足している時にその栄養素のサプリを摂取すると、効果を体感しやすいです。(単に偏食が良くなかっただけ、とも言えますが…。)

逆に、その栄養素が体内に十分あれば、必要以上に摂取してもほとんど意味がありません。ウンコになるか、オシッコになるか、逆に調子が悪くなるかです。普段の栄養バランスの良い方は、あえて摂る必要はありません*5

2-2. 短期のパフォーマンスアップなら、疲労感解消型


photo by Au Kirk

アルコール・カフェインをはじめとした、脳味噌にダイレクトに働きかける疲労感解消型は、効果を最も体感しやすく、一時的なパフォーマンスアップに最適です。

ただし、これはあくまで疲労を回復させるというより、強引に疲労を抑制する、疲労を一時忘却させるタイプと考えましょう。

過剰摂取した場合、副作用が強く出て、その反動で睡眠の質が落ち、逆に疲労回復が遅れてしまうリスクがあります。

もちろん、自分にとって毎回”丁度良い”レベルで摂取を抑えられれば、リスクはあまりありません。

しかし、この型は効果を感じやすいため依存しやすく、疲れやすい状態ほど、その”丁度良い”のレベルを保つことが難しいのも、また事実です。いっそのこと、最初から摂らない方が、長期的な疲労回復(疲労予防)には良いという考え方もあります。

ちなみに、肛門からカフェインを注入するコーヒーエネマ(コーヒー浣腸)という健康法がありますが、この方法が疲労感解消に役立つという十分な科学的根拠はないようです。(ただし、便秘解消のスッキリ感は、疲労回復感と似ている気がしなくもありません。)

いずれにせよ、上からでも下からでも過剰摂取は禁物です。ご利用は計画的に。

2-3. 長期の疲労予防なら、疲労物質除去型


photo by David Blackwell.

疲れにくい体作りなら抗酸化系、飲み過ぎ・肝臓の疲れにはアンモニア除去系というのが、業界的には一応セオリーです。

ただし体感としては、疲労解消型のように明確ではありません。したがって、実際に疲労回復に効果あるのかどうか、自力では評価しにくいタイプです。

では、科学的な評価はどうか。サプリ業界は商業主義LOVE、利益相反YESな世界らしく、マトモな科学論文、科学的データがあるかのように見えて、よく読むと中身がスカしているものが結構あります*6。少々のプラスの効果を強調して売り出しているものが多いという印象です。

というわけで、使い方としては「地味に摂り続ければ疲れにくくなるかもしれない。いや、疲れにくくなるはずだ!」と強く自己暗示をかけると良いです。元々のちょっとした効果にプラセーボ効果を加えることで、長期的・持続的な効果を狙うのです。

気に入ったサプリを選んだ上で、尻をどっしり据えて気長に取り組めば、あなたはきっと幸せになれるはずだと、僕も業界の人も信じています。

ただし、ビタミンEやβカロチンなど、一部の抗酸化物質は、摂り過ぎによるリスクも指摘されています。ビタミンEやβカロチンのサプリメント摂取は、調査以前に欠乏している人を除いて、死亡率を高めるという研究結果があります。ビタミンEもβカロチンも、高濃度では抗酸化どころか逆に酸化作用を強めてしまうのです*7

過剰摂取はウンコ化するだけで意味ないですし、時に危険だと心得ましょう。

2-4. 手堅く効果を得たいなら、睡眠改善型


photo by planetchopstick

扱いに知識が少しいりますが、上手に使えば確実な効果を得やすいのが、この睡眠改善型です。

睡眠改善を通じて実質的な疲労回復効果を得やすい、過剰摂取に気を付けさえすれば副作用もそれほど心配しなくてよいものが多い、値段の安いものが多いなど、メリットがいくつかあります。

ただし、このタイプは効果がある分だけ、個人によって摂取量の調整が難しいです。ものによっては摂り過ぎて気持ち悪くなることがあります。

少しずつ摂ることから始めて、実際の睡眠の質、体調の変動を確かめながら、自分にとって最適な量を探していかねばなりません。

また、副作用は少ないものが多いですが、全くないわけではありません。何らかの持病のある方、妊娠中の方は特に注意がいります。トリプトファンにいたっては、過去米国で大きな被害事件が起こりました*8

そんなこんなで、利用前に使い方のお勉強と実験が必要な、やや上級者向けのタイプです。お尻プレイに多少のお勉強と実験が必要なのと似ているかもしれませんね。

3. まとめ

  • 疲労回復サプリメントには、個人の状況・望む効果によって最適な選び方が存在する。
  • 疲労回復サプリメントには、栄養補給型・疲労感解消型・疲労物質除去型・睡眠改善型の4タイプが存在する。
  • 栄養不足には、栄養補給型がおすすめ。
  • 短期のパフォーマンスアップなら、疲労感解消型がおすすめ。
  • 長期の疲労予防なら、疲労物質除去型がおすすめ。
  • より確実な効果を求めるなら、睡眠改善型がおすすめ。
  • 唯一にして真の疲労回復方法は、サプリメント摂取でなく、お姉さんの指カンチョー。


photo by Flооd

Footnote

*1:このアルコールとカフェインはいわゆるサプリメント、栄養補完食品というより、医薬品に近い(分量や用途次第では完全に医薬品)です。ただ、古代から摂られている伝統的なサプリみたいなものなので、あえて取り上げました。サプリの範疇を超えて医薬品レベルに話を広げると、軍人やアンフェアなスポーツ選手が使うアンフェタミンや、昔の日本人労働者がよく使っていたメタンフェタミン(ヒロポン®)などの覚醒剤が、この疲労感解消型になります。

*2:昔から疲労物質と言われているものに、「乳酸」がありました。ただ現在では、乳酸は筋肉疲労の過程で出てくる代謝物であるものの、乳酸自体が疲労の原因ではないとの説が有力です。

*3:アルギニン・オルニチン・シトルリンなどのアミノ酸系サプリは、「成長ホルモンの分泌を促す」という触れ込みで売られてもいます。アミノ酸は多機能なため、一種のアミノ酸が体の中で色々な働きを担っている場合が多いです。

*4:逆にいえば、睡眠の質を向上させるような栄養分と、その摂り方が、疲労回復のキーになってくるわけですが、その辺の話はいずれ書く予定。

*5:しかし難しいのは、何が最適なバランスなのか、個人差があること。国によって栄養摂取基準、つまり概ね健康な人の平均的な栄養バランスも違います。遺伝子やライフスタイル、ストレスの多寡なんかで差が出てきそうです。

*6:逆に論文自体は割とマトモなこと言っているのだけど、宣伝文句がやたら過剰だったり、都合の良いデータだけを抜き出して表現していたり…。こちらのパターンの方が多いかもしれません。

*7:『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版』 p.636~640

*8:トリプトファン事件 - Wikipedia